R35−LOVE 04
結婚とは本来めでたいものなのだが、俺は凄く複雑な気分だった。
真田の結婚式、俺はやはり友人代表として参加しないといけないのだろう。
変に逃げると周囲が不審がる。特に蓮二は。
けどこんな気持ちのままで参加すると余計に不審な行動をとってしまうかもしれない。
どうすべきか数日俺は悩んだ。
悩み続けて数日経った時、俺に救いの手が差し伸べられた。
捨てる神あれば拾う神ありとはこのことだろう。
それは赤也からのメールだった。
「真田先輩が結婚するのは喜ばしいことだし俺も祝いに駆けつけたいっす。でも真田先輩の結婚式の日って丁度アメリカで行われる国際大会が行われる期間で、おそらく越前リョーマがその大会に出場するそーなんです。アイツが出るんなら俺も出たいし・・・幸村先輩はやっぱ真田先輩の結婚式を優先ですよね」
赤也は俺を追う様に彼もまた、立海大付属中を卒業後イギリスの、俺とは違うクラブに留学してきた。
住んでいるとこも日本で例えれば新宿と鎌倉くらい離れている距離なので、お互いが休みのときに会ったりもした。
赤也は越前リョーマをやたらと目の仇にしている。
って俺もだけど。
俺は越前がアメリカで行われる国際大会に出場するなんて情報は知らなかった。
まさにこの情報は天からの恵みと言えよう。
国際大会に出ると言えば真田の結婚式の立派な欠席理由となる。
結婚式には祝電で済ませればいい。
これは“逃げ”だ
逃げるのは性に合わないが、逃げずにはいられない。
真田の花婿姿なんぞ、真田の嫁だなんてこの目で見たくもない。
いや、今の俺にとって真田の結婚式に参加させられるのは拷問に等しい。
それほどまでに俺は末期なのだ。
だから逃げる。
国際大会をだしにして・・・
俺は赤也にメールを返信した。
「赤也、俺はすごく迷った。越前の出る大会だからこそ俺も出場したい。でも真田のこともある。でも俺は自分の本能に従おうと思う。だから国際大会に出場する。真田には侘びを入れて当日には祝電を送るつもりだ。テニスを追い続ける為なら真田も理解してくれると俺は信じている。いや、真田ならテニスを蹴って帰国する方が怒るだろう。」
我ながら尤もらしい文章だと思った。
これなら誰が見てもテニスにひたむきに追い求める俺だと認識してくれるだろう。
実際、後日真田に詫びのメールを送ると真田らしくとても理解ある文章と国際大会に向けての激励が返って来た。
少々後ろめたい気分になったが、この時の俺はこれ以外に方法はなかった。
だが、やはり蓮二は俺が逃げたことをお見通しだった。
この親友だけには誤魔化しなど通用しない。
だが、俺はあくまでもシラをきり通した。
「テニスでいっぱいいっぱいなんだよ」と
そして蓮二もそんな俺に合わせてくれた。
そんな蓮二もその4年後には結婚した。
立海大卒業後も大学に残って専任講師をやっている蓮二に上司である教授が見合いを勧めたのだ。
蓮二は身内だけで式を行うということで友人知人を招いて披露宴はしなかった。
「あ〜あ、蓮二の花婿姿を見たかったのにな」
「だから見せているではないか」
「写真だけなんてつまらないよ。俺は生で見たかったの」
「・・・貞治と同じことを言うのだな」
「乾だけじゃなくてきっと皆同じ事思ってるよ」
「俺は披露宴とかそういう賑やかで派手なことは好まん」
「え〜、それでよく嫁さんが許したな」
「あいつも恥かしいから披露宴は遠慮したいと言ったのでな」
「なんだよそれ」
俺は蓮二の新居のソファーで式の写真を見せてもらいながら散々ぶーたれていた。
オフの時期に日本に帰省した時のことだった。
蓮二の嫁さんは俺の予想とは反して外見だけは今風のギャルっぽい女性だった。
でもそれは外見だけで中身は非常に地味でそこが蓮二も気に入ったのだろうと思った。
蓮二が結婚する4年の間にはジャッカル、ブン太、赤也が次々と結婚した。
俺は披露宴や二次会に参加したが、祝いの席をいいことに再会した真田とはお互いのプライベートな話を一切しなかった。
しなかったというより話をさせる雰囲気に持っていかなかったのだ。
聞きたくなかった。
真田の結婚の翌々年に誕生した娘の話なんて。
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