〜 ten years after 〜 10年後の日常

† Wonderful World †



その日俺は用事があって別の支店に行った。
その帰り
繁華街で俺が今一番よく知る男の背中を見つけた。

不二周助・・・・・・




* * * * * * * * * *

「なあ不二、今日お前渋谷にいなかったか?」
夕食時に訊ねてみたら一瞬吃驚したような怪訝そうな不二にしては珍しい表情をした。
「英二は何で渋谷にいたの?」
逆に問われた。そりゃ不二は今日は仕事が休みで渋谷にいてもおかしくないが仕事中でしかも渋谷勤めじゃない俺がまっ昼間に渋谷にいたらおかしいもんな。
「用があって渋谷の近くにある支店に行っていたんだよ。そしたら繁華街で不二に似た人を見かけて、でも知らない人と連れ立っていたから声かけるのやめたんだよ」
「そうなんだ。でもそれはたぶん僕だよ。渋谷にいたよ」
「やっぱり。で、一緒にいたのって誰?なんかめちゃくちゃおしゃれでかわいい男の子だったじゃん。なんていうかアイドル系だよな。この前の乾の時みたいにまた俺も知っている奴で最近急激に変わった奴かなと思ったんだけどさ、あれは知らない人だったよ」
「ははははは。英二の知らない人だよ。だって僕の親戚の子だもん」
「あーそうなんだ。よかった。あれが実はかつての青学の奴だったらどうしようかと思ったよ」
「面白いこと言うね、英二も」
「だって乾なんて詐欺じゃん!眼鏡はずしたら誰だか分かんないよ」
「詐欺って・・・・・・」
「でも不二の親戚の子ってホントにモデルかアイドルやってんじゃないの?」
不二も綺麗な顔だと思ってたけどよくよく考えると不二の姉弟も綺麗な顔立ちをしている。ひょっとしてこいつの親族みんな綺麗顔なんじゃないかと思ってしまう。
「ファッション専門学校に行っているんだ。だからあんな外見をしているんだ」
「へえ〜未来のデザイナーじゃん!すげーじゃん」
「・・・英二」
俺は本当に不二の親戚の子がすごいと思って言ったのに何故か不二は困った表情をしている。
「今日見たこと聞いたことは黙っておいてくれるかな」
「なんで・・・・・・?」
「彼は地方から東京に出てきているんだ。親の反対を押し切ってファッションの勉強をするって。だからあの子はバイトをしながら奨学金制度をうまく使ってなんとかやりくりしてるんだ。」
「そうなんだ・・・大変だね」
「彼の両親は東京にいる僕の家族に一切関わるなと言ってきたんだ」
「何それっ!ひでー話じゃん!」
「酷い話だろ。で、僕は時々こっそりと彼に会って食事をごちそうしたりしてたんだ」
「そうなんだ・・・・・・」
ようやく解った。不二が一瞬怪訝そうな顔をした訳を。不二が影で援助している親戚の子と一緒にいるのをあまり知られたくなかったんだ。
「でもあの子おしゃれでなかなかいいセンスしてると思うからその道でうまくやっていけると思うよ。俺も応援する!」
「ありがとう。でもこれはうちの親族の問題だから英二まで巻き込みたくないんだ。ごめんね」
「そっか・・・」

「というわけで今の話はもうなかったことにして忘れてよね」




不二に強制終了されてしまった。







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