〜 ten years after 〜 10年後の日常

† Morning Call †



春ももう終わりに近付き夏の扉が見えてくる時期と言えど明け方は冷え込むものだ。
こんな時布団の温もりは心地よい、まして休日の朝でゆっくり眠れるとなれば尚のこと。しかしそんな虚ろな気持ちで布団に包まっている自分の体が動かなくなると虚ろな頭もぼんやりと覚醒していく・・・


体が動かない!


違う


体が動かないんじゃなくて体を押さえつけられている!





「!!!!!!!!」










「やあ、オハヨウ越前」


「・・・・・・・・・先輩、重いっス」

「だからもう"先輩"じゃないだろう」




越前リョーマが目を開けるとそこには自分の体の上に乗ってじっと見下ろしている乾がいた。
















* * * * * * * * * *



「わざわざ起こしに来てやったのに何だそのふてくされた顔は。休日の自主トレ用のメニューについて相談したいと言ってきたのはお前の方だろう」
「だからってこんな朝っぱらから、それに何でアンタが俺の部屋の鍵持ってるんスか!?」
「ここの寮の管理人に事情を説明して借りたんだ。それには日頃の行いがモノを言う。まず俺はこの社員寮に入寮した当時から管理人に何かにつけ接触を図り顔を覚えてもらった。そして朝出社するときや夜に寮に戻って来た時に管理人室の前を通った時に一言二言世間話をして次第に懇意になる。それで管理人に俺が越前専属のトレーナーだと知ってもらい・・・・・・」
「それで不審がられることなく俺の部屋の鍵を借りれたということですか」
「そういうことだ」
リョーマは大きく溜息をついた。


「まだ眠たいという顔をしているな、どうだ目が覚めて頭も体もシャキッとするドリンクを作ってみたのだが」
「い、いえ!全然眠たくなんかないですっ!じゃあ俺は食堂に朝食を摂りに行きますんで!」
リョーマは慌ててベッドから飛び起きると服を着替えはじめる。
「言っておきますけど"自主トレ"ですから一人でやりますんで乾さんは付いて来ないで下さいね」
リョーマは上着の袖に腕を通しながら顔だけ乾に向けて言った。
「当たり前だ。保護者でもないのに四六時中付いていられるか。それに俺にだってプライベートというものがある」
「データの整理をしたり変な汁の開発したりで忙しそうっすね」



「今夜は手塚と飲みに行く約束をしている」

「えっ・・・?」

「越前も来るか?」



「い、いや別にいいっす。それより食堂に行きますよ」








リョーマは乾に背を向けたままドアに向かった。



今は手塚には会えない。






「次に会うときはコートでネットを挟んで対戦する時」





それはリョーマと手塚が2年前に結んだ二人だけの約束。
2年前のあの日 ――――― 手塚が青春学園大学を卒業した翌日。
最初で最後のただ一度だけリョーマが手塚に抱かれた日。












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