〜 ten years after 〜 10年後の日常

† 君が好き、僕が好き †





不二の体温が心地よい。
不二に縋り付いてるのが心地よい。
不二に包まれているのが心地よい。
何だかとても安心する。
それはまるで大地に包まれている感覚
広くて、温かくて、そして心安らかになる。










目が覚めた。
見慣れた天井。
朝日が差し込んでうっすらと明るくなった部屋。

隣では不二がまだ眠っている。
ひとつのベッド、ひとつの布団で全裸の二人。
顔が赤くなるのが自分でも判った。
ドキドキと鼓動がだんだん早くなる。

俺はとうとう不二と一線を越えてしまった。



不二を起こさないように体を捩る。
「・・・・・・?」
佐伯との時にはあった独特の痛みが全くない。
不二は上手にやってくれたんだ。
上手に・・・・・・?

いや違う。

昨夜の記憶が全くない。

お互い裸でぎゅ〜っと抱きしめあって・・・それから・・・・・・

それからどうしたんだっけ???
まさか・・・



「んー・・・」
不二が目を覚ました。
「あ、ふっ不二・・・・・・その・・・」
ひょっとして俺は・・・

「酷いよ英二!」
「えっ・・・」
「さあこれから本番開始だって時に寝ちゃうんだもん」
やっぱり・・・
俺は心地よさのあまりあのまま寝てしまったんだ。
「ごめん・・・」
「じゃあ今から続きやるよ」
と言うや否や不二が俺に覆いかぶさってきた。
「うぁっ・・・」
首筋に唇を這わされてぞわっとした感覚が湧き上がる。
「ま、待て不二っ・・・」
「もう待たない」
「くっ・・・」
胸の飾りに歯を立てられつい声が漏れてしまう。
空いている方の手でもう片方の飾りを摘まれて背筋に刺激が走る。
太腿に不二のモノを擦り付けられる。
柔らかかったそれが徐々に堅くなっていくのが分かる。
不二、俺に欲情してる・・・
俺に・・・
未だそれが信じられない。
「英二、愛している。ずっと君だけを・・・」
唇を塞がれた。
舌を差し込まれて絡め取られる。
歯列をなぞられる。

目を少し潤ませて頬が赤くなっている不二の顔。
これが不二の欲情した顔。
俺をずっとそんな目で見ていたんだ。

恥かしい・・・

初めて見る欲情する不二の顔に抑えていた恥かしさが一気に湧き上がってきた。


バシッッ・・・・・・
「嫌だっ!!!!」


恥かしさで叫んだのと俺の右手が不二の頬を平手打ちしたのがほぼ同時だった。

張り飛ばされた左頬を押さえて呆気に取られた顔で見下ろす不二。
その顔がだんだん強張っていく。

しまった・・・・・・

俺はうつ伏せになって顔を枕に埋めた。
「こんな明るいところでなんか・・・・・・恥かしいじゃんか」


「・・・お預けを食らった僕の身にもなってほしいね」
不二の声は低くて静かだった。
これは怒ったときの声。






「もう、いいよ・・・」

ひとことそう言って不二は俺の部屋を出て行った。





















不二が出て行っても俺はベッドの中で枕に顔を埋めていた。

不二を怒らせてしまった・・・

どうしよう・・・

どうしようと思ってもかといって解決策が思い付くわけでもない
不二に嫌われるのは嫌だ
けど、かといって
不二とSEXをするのも恥かしい・・・




うだうだしている間にどうやら再び寝てしまったらしく目が覚めたら昼前だった。
自分がまだ裸だったことに気が付いてもそもそと起き上がってとりあえずスウェットの上下を着てみる。
何も考えられない。
何もする気力もない。
俺は再びベッドに横になった。

ただ時間だけが刻々と過ぎていく。



コンコン

ドアをノックする音
どうしよう・・・不二だ

「・・・・・・・・・」
何ていったらいいかわからない

でも不二は音を立てないように静かにドアを開けた。
「・・・英二?」
「・・・・・・・・・」
寝てると思ったのか小さな声で俺を呼んだ。

「お昼ごはんだけど・・・」
「・・・・・・いらない」
「・・・いつまで拗ねてる気?」
「・・・拗ねてない・・・・・・ホントに食欲ないんだ」
なんだか頭も胃も重い。
とても食事ができる気分じゃない。

不二が近づいてきてベッドの端に腰をかけた。
不二のヒンヤリとした掌がそっと額に当てられる。
「英二、具合悪い?疲れてた?ひょっとして僕、英二が具合悪いのに昨晩無理強いしようとしたんじゃ・・・」
「違う・・・・・・」

具合が悪いのでもない。
分からない

分からない、今の俺・・・









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