〜 ten years after 〜 10年後の日常

† 2年前のあの日〜リョーマの回想〜 †



「次に会うときはコートでネットを挟んで対戦する時」





それはリョーマと手塚が2年前に結んだ二人だけの約束。
2年前のあの日 ――――― 手塚が青春学園大学を卒業した翌日。
最初で最後のただ一度だけリョーマが手塚に抱かれた日。
いや、抱かれたのではなく"抱いてもらった"と云うのが正しい。
ただの先輩という以上の感情を抑え切れず。あの日手塚を自宅のテニスコートに呼び出した。


「プライベートで俺と最後の勝負をさせてください」




結果は手塚の勝ち。
試合後汗を流す為に越前家へ行った。家人は誰も居らずリョーマが風呂の用意をてきぱきと整え順番にシャワーを浴びた後、リビングでお茶を飲んでくつろいだ。
「手加減なしの本気でしたね」
「当たり前だ」
「また強くなったんだ」
「越前、お前ならすぐに追いついてこれる」
「待っててくれますか?」
「!!!!!」
手塚の返事を聞くより早くにリョーマは手塚の胸に飛び込んでいた。
「手塚先輩のこと・・・ずっと、ずっと好きでした。ただの先輩ではなく特別な存在なんです」
手塚の背に廻されたリョーマの腕に力がこもる。
「中学の時からずっとずっと追いかけていた。これからはアンタはプロとして、でも俺はまだ大学生で・・・、だから俺も卒業したらすぐにアンタと同じ舞台に立てる様に追いかけます」
手塚は黙って自分にしがみついている後輩を見下ろした。この後輩は大学生になって流石に中学の頃よりもぐんと背は伸びたが結局手塚の身長には追いつけなかった。
「俺はアンタが好きです。特別な意味で。……一度だけでいい、俺を抱いて下さい」




「・・・・・・自分の言っていることが解って言っているのか?」
しばらく黙っていた手塚だったがようやく口を開いた。
「解ってる。たとえアンタが俺のこと好きじゃなくてもいい。ただ俺は手塚先輩に抱かれたいんです。一度だけでいい。そしたらもうこのようにプライベートで会いませんから、次に会うとしたら俺がプロになってコートの上でネットを挟んで試合をする時ですから…」


「………解った」
しばらく間を置いた後手塚は返事をした。
その途端リョーマは手塚に口付けをした。深く激しくまるで手塚のすべてを吸い尽くすような貪る様なキス。
「む…ん、…んん」
手塚が息苦しそうな声を出したのでようやくリョーマは手塚の唇を解放した。
ようやく新たな空気を吸い込めて落ち着きを取り戻した手塚が見たのは頬をわずかに赤く染め今までに見たことのない情欲に孕んだ潤んだ目で自分を上目遣いで見るリョーマの姿だった。そんなリョーマの姿を見て背中にぞくりと言われようのない感覚が走る。
「ここじゃ何ですから俺の部屋へ行きましょう。ちゃんとベッドもあるんで」









* * * * * * * * * *





リョーマの部屋に着いてからはリョーマが手塚を引っ張り自分を押し倒す形でベッドに倒れこみ再び口づけをした。
その後はすべてリョーマがリードをした。手塚は何も言わずにただ黙ってリョーマのリードに従ってリョーマをかき抱いた。
さすがに手塚はリョーマの中に入るのを躊躇ったがリョーマはベッドサイドに用意してあったローションを取り出し自分の秘部に塗りたくった。
「手塚さん、これで大丈夫だから……」
そして手塚のひざの上に向かい合うようにまたがり手塚自身を掴んで自分の秘部の入り口にあてがい腰を下ろした。
「あ、ああーーーーーーっっっ!」
ローションで慣らしたとはいえ、初めて受け入れる衝撃に耐えられずリョーマは大きな声を出した。
「痛いのか?」
手塚が心配そうな顔をしてリョーマの顔を覗き込んでくる。
「あっ……、あ、ああん…」
リョーマは手塚を心配させたくなくてふるふると顔を横に振った。
「あ、アンタを……感じて…い、る」
リョーマは痛みを我慢して無理やり笑顔で手塚に微笑んだ。
嘘ではない。確かに痛みと衝撃で息もままならないが、今手塚と繋がっていると思うと体の奥から悦びが沸いてくる。
リョーマはぼうっとした頭でそういや手塚が今はじめて口を開いたということに気が付いた。行為の開始からずっとリョーマがリードをしてここを触ってほしいだとか言っても手塚はただ黙ってリョーマの言う通りに従っていただけだったのだ。
その唇にリョーマは無理矢理自分の唇を押し当てて貪るように吸い付いた。
「好きです。アンタだけが・・・あ、あん・・・手塚先輩だけが・・・好きなんです。愛しています」
手塚の唇を貪りながら息も絶え絶えにリョーマは自分の心の内を曝け出した。



「あ、あん・・・やっ・・・・・・ああっ・・・いいっ、手塚せんぱっ・・・いいっ・・・いいよ」
リョーマが腰を上下に動かすたびに手塚自身の先端が最奥に当たり、その度に背中にぞくりとした快感が走る。リョーマはただひたすら腰を上下に振り続けた。
「・・・・・・越前」
呼ばれた感覚がしてリョーマは潤んで悪くなっている視界で手塚の顔を捉えた。
「越前」
今度ははっきり聞こえた。
「あ、何?」
「お前ばかり動いていたら腰に負担が掛かり過ぎるだろう」
そう言うや否や手塚はリョーマの躰を繋がったままベッドに押し倒した。
「て、手塚先輩!?」
リョーマは下から手塚を見上げた。手塚の背に丁度窓があるのでその表情は逆光になっていて判らなかった。その手塚の影がだんだんと近づいてきて・・・
リョーマの唇に軽く触れた。
唇に温かいものが軽く触れたときそれが手塚の唇だと判断できるまで数秒かかった。
「動くぞ」
手塚はリョーマの両足を自分の両肩に抱え上げてしっかりとリョーマの腰を掴んで手塚自身をぎりぎりまで引き抜いた後、勢い良くリョーマを貫いた。
「あああああっーーーーーーーっっっ!!!!!」
自分が手塚に跨って動いているのとは比べ物にならない衝撃だった。あまりの衝撃につい今までない大きな声が出てしまう。
「・・・すまない越前、痛かったか」
「躰の位置を180度変えて・・・」
「え?」
「窓を背にしてるからアンタの顔が見えない。俺、アンタの顔が見たい」
「分かった」
いきなり自分の問いかけとは関係のないことを言われて一瞬手塚も戸惑ったがリョーマの言う意味を理解して言うとおりに繋がったまま躰の位置をずらした。
「手塚先輩・・・・・・」
光を浴びてようやく表情のはっきりした手塚は今までに見たことのない「男」の表情をしていた。
「痛くなんかない。もっともっと俺を貫いてもっともっと俺をめちゃくちゃにして・・・」
「分かった」
律動が再開されると部屋の中は二人の肉がぶつかるパンパンという音と繋がった部分から溢れるぐちゅぐちゅという卑猥音で埋め尽くされる。
「ああっ手塚先輩っ・・・手塚先輩っ・・・」
「くっ・・・」
「て、てづ・・・か・・・・・・せんぱ・・・な、中にっ、中に出してっっっ俺の中にっ!」
「・・・いいのか?」
「いいからっ」

二人はほぼ同時に熱を解放した。







* * * * * * * * * *












「・・・・・・ん、越前」
「えっ!」
「“え”じゃないだろう。どうしたんだボーっとしてお前らしくない」
俺の目の前で夕食中の長身のトレーナーが身を乗り出して俺に声を掛けてきて現実に引き戻された。
「あ、いや何でもないっす。それよりもこの菊丸先輩からの写真を俺にも転送してくれませんかね」
「ほう〜越前がそんなこと言うなんてめずらしいな。だいたい越前はカメラつき携帯を持っているのにカメラを使用しないだろう?」
「たまたま行った店でキャンペーンをやっていて何故かカメラつき携帯の本体の方が安かったんですよ」
「そのわりには越前の実家の猫ばかり撮影しておまけにその猫の写真を壁紙にしているじゃないか」
「げっっ、何でそんなこと知っているんですかっ!!!!」
「ははははははは、カルピンに聞いたんだよ」
「ばれる嘘は言わないで下さい」





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