〜 ten years after 〜 10年後の日常

† ignite 2 †



どうしてこんな事になったのだろう・・・
体が熱い
佐伯が触れるところから快楽が生まれ俺を絶頂へ追い詰めようとする。

媚薬の所為だ。


薬が効いて躰が疼き出した俺を佐伯はベッドに誘った。

断れなかった。

佐伯は男で友達で・・・
そんなことどうでもよかった。

この熱を解放してほしい。




佐伯のやさしいキスが俺の瞼、唇、首筋、胸、腹、そしてもっと下へ降りていく。
抵抗しようとして振り上げた腕は空を舞って空しく佐伯の背中に落ちていった。
自分の意思と反して腕は佐伯の背中に縋るように絡まりこの行為のもっと先を催促しているかのようにとらえられても致し方なかった。



「どうだ菊丸、男同士でも結構感じるものだろ?」

「そんなこ、と・・・んあっ」

自分でも驚くほど甘い声が出る。

嫌なのに

男同士でこんな・・・

嫌な筈なのに

どうして俺は男の下で女みたいに喘いでいるんだろう・・・




「やっ・・・あ、ああーっっっ」
佐伯が俺のモノを握りこんだ。
そのまま親指の腹で先端を撫でられて背筋に電流が走る。
「やっぱお前最高だよ。その顔凄くそそる。あの不二が10年間も黙って想い続けただけの男だよな」
「いっ・・・や・・・・・・」
「嫌なのか?じゃあ止めてやるけどここで止めてもいいのか?」
俺は潤んで霞んだ視界で佐伯を見上げた。
嫌な筈なのに
男同士でこんなこと。
なのに躰は快楽を求めている。
「続け・・・ろよ」
「そうこなくっちゃ」
佐伯は再び強く握って上下に扱きはじめた。
「くっ・・・はっ・・・」
どんどん流されていく。
体中の熱がすべて下腹部に集中していく。
佐伯の手によって更に昂っていく。
友達とか男同士だろうがもうどうでもいい。
どうでもよくないことがどうでもよくなっていく。

「ああーーーーーっっっ・・・」

俺は佐伯の手の中で射精をしてしまった。





「菊丸がイク顔よかったぜ」
佐伯が脱力した俺にキスをしてきた。
もう抵抗する力もない。

「不二が本気になる気持ちわかるぜ」

「ちょっ、さっ佐伯っ!」
佐伯は俺がぐったりしているのをいいことに俺の両足を広げて持ち上げた。
ちょうど赤ん坊がおむつを取り替えてもらうような恥かしい体制。
「嫌だっ!」
口では言えるけど躰が思うように動けない。
「ひゃっ・・・」
後孔に何か冷たいものを感じた。
「活性剤のローションだ。冷たいけどちょっと我慢しろよ」
「ちょっ・・・どこに指突っ込んで、うあっ・・・」
入り込んだ指が中で動き回りゾワゾワとした得体の知れない感覚が湧き上がる。
「初めてだからよくほぐしておかないとな」
「ほぐすって・・・!?」
「男同士でSEXする時はここに突っ込むんだ。よく覚えておけよ」
「どこにナニ入れるんだ!ひゃあんっ!!!」
佐伯の指がある一点を付いた時快楽の電流が脳天まで駆け上った。
「前立腺か」
「や、やめっ・・・あ・・・んあっ」
佐伯はそこばかり攻め上げる。
俺は再び快楽の海へ沈められた。
もう何が何だかわからない。
もうどうでもいい。
「ん・・・やぁああああ・・・・・・っ・・・はぁっ」
太腿が感じて震える。
「菊丸、お前すげー色っぽい。不二のやつ一緒に住んでてよく我慢してたな」
「でも、俺には・・・んぁっ、ふ・・・じ、が何考え・・・て、るのか・・・はぁっ、わから・・・なぁっ・・・・・・」
佐伯が背をかがめて俺の顔を覗き込む」
「不二は菊丸のことしか考えてないぜ」
「う・・・そ」
「嘘なもんか」
「大学ん時・・・俺といっしょ、に・・・はぁっ、合コン行きまくって・・・た、し。それに、ぁふっ・・・彼女いた・・・・・・し。そして、あ・・・の、専門学校生のこととか・・・・・・ひゃあっっっ・・・」
奥の入り口に熱いものが突き当てられた。
佐伯の熱塊だ。
そして佐伯はそのまま勢い良く俺を貫いた。

「ああああああぁぁぁぁっっっっっーーーーーーーーーっ!!!」

引き裂かれそうな痛み。
そして圧迫感。
息が出来ない。
でも
なぜかこの痛みが気持ちよくも感じる。
「お前ってホントめでたい奴だな。不二がお前と一緒に合コンに行ってたのはお前が幹事やってる時で男の人数足らない時ばっかだろ」
「あ・・・・・・」
「そして彼女作ったのは菊丸好みの女が不二にモーションかけてきたから別のましな女選んで菊丸好みの女を不二から離れさせたんだよ。菊丸に『女を取られた』なんて恨まれるのはごめんだって言ってたからな。そして潮也君は菊丸に似ているところがあるんだ。だから菊丸の身代わりだったんだよ」

佐伯の口から聞かされた真実は衝撃だった。

本当なのか不二?

そこまでして俺のことを・・・?
そして俺の為に犠牲になった土山さんや潮也君に申し訳ない。


「菊丸のお初頂いたぜ。ぼやぼやしている不二が悪いんだ」

佐伯が動き出した。
結合部分が熱い。

擦られて、
貫かれて、
痛いはずなのに


気持ちがいい

頭がぼんやりする
きっとこれは薬の所為
でなきゃこんな非常識な事やってない



佐伯の言葉が頭にぼんやりと響く

人が愛する事やSEXをすることに
年齢とか年の差とか男とか女とか関係ない

果たしてそうだろうか・・・



何が何だか解らない

どうでもよくないことがどうでもよくなっていく






助けて・・・不二




* * * * * * * * * *







煙草の煙が鼻に衝いて目が覚めた。
顔をそちらに向けると床に座った佐伯が一服していた。

「佐伯・・・・・・」


「SEXの後の一本って美味いんだな、これが」


佐伯のダイレクトな台詞に顔の温度が上昇するのが自分でも分かった。

「大丈夫か?一応手加減して優しくしたつもりなんだけどな」

「頭がボーっとする。二日酔いみたいだ。どれだけ薬を盛ったんだよ・・・それに体中が痛い」
「今日はここに泊まっていけよ、もう何もしないからさ。明日はここから出勤したらいいさ」
「これ以上させるかっ!」
俺は動かせない体を無理矢理起こした。
「それ、そんなに美味いのか?」
俺は赤いマルボロの箱を指差した。
「ああ」
「・・・俺にも一本くれ」
「はあ!?菊丸は煙草やらねーじゃん」
「なんか今思いっきり吸いたい」

イライラする
モヤモヤする

なんだか気分がスッキリしない。



咥えた煙草に火を点けてもらって一気に吸い込んだ。
口内に広がる独特の味
不思議と嫌な感覚はなかった。
学生時代に興味本位で吸った時は不味くてすぐに吐き出した。
「へえ・・・?」
佐伯が物珍しそうに俺を見ている。
一本吸い終ると不思議と気分が落ち着いた。
不思議なことに自分が吸ったのはそんなに嫌じゃなかったのに佐伯が吸っている煙は自分の鼻に衝いて嫌な感じがした。
「疲れているんだな・・・、もう一本いるか?」
佐伯がもう一本差し出してきた。けど俺はそれを佐伯にそのまま返した。
「いや、一本で十分。それに疲れさせたのはお前の所為だろ」
「ははは、でも俺が疲れさせたのは躰だけで実際に菊丸が疲れているのは心だろ?」
図星かもしれない。
「不二に煙草を勧めたのも実は俺なんだ」
「そうなんだ」
「不二が菊丸に言えない想いを抱えて苦しんでいる時だったかな・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「菊丸もいよいよ煙草デビューかな」
「いいや、俺はこれ以上はもういいよ。止められなくなったら困るし今は社内も駅も禁煙場所が多いから煙草吸わない方が気が楽だ」
「そっか、でもその方がいいかもな、今は喫煙家にとってやりづらい世の中だよ」
「それにしても不二は佐伯に勧められて煙草始めたんだ・・・・・・」
「ああ」
「不二と佐伯、その・・・・・・キスの味が同じだった」
佐伯にキスをされる度に何故か不二を思い出した。
何故不二の事ばかり考えてしまうのかと思ったけど同じ煙草の所為だったんだ。

「どうだ?不二を受け入れてみる気になったか?」
「・・・解らない」

解らない。
まだ自分でもよく解らない。
媚薬の所為だけど佐伯に抱かれて物の見方が変わったような気がする。
今まで拒否してきた男同士の世界。
相手が佐伯や不二という知り尽くしている友達だからめちゃくちゃな嫌悪がなかったのかもしれない。
いや、信頼している友だからこそ嫌悪が抱けなかったのかもしれない。
佐伯のやり方は強引だけどおそらくもう二度とこんなことやらないだろう。
佐伯は俺に不二を受け入れさせようとしてこんな強行手段に出たのだ。

「お前、ホント何も覚えていないんだな」
「何が?」
「二回目のイク時に俺に縋り付いて『助けて不二』って言ってただろ」
「えええっっ!!」
そんなこと覚えていない。
「無意識に不二を求めてたって訳か・・・・・・」


俺が無意識に不二を求めていた・・・
そんな馬鹿な・・・



「自分の胸に手を当ててよ〜く考えてみな」





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