イップス
分かっていた。
分かっていた筈なのに・・・
視界が暗くなり体の感覚がなくなっていく。
おそらく俺は倒れているのだろう。
仰向けで
目を閉じていても光は分かる。
練習試合で幸村と対戦することになった。
幸村とは久しぶりに対決するから歓喜でゾクゾクする。
全力で戦わせてもらうぜ
そしてその結果
俺はイップスに陥ってコート上に沈んだ。
次に目が覚めたら目の前に幸村のドアップが見えた。
そして白い天井。
俺は即座にここが保健室のベッドだと解った。
でも
何で幸村が俺に覆いかぶさってんだ?
てかこれって・・・・・・
「(視力は回復したみたいだね)」
何かを言ったみたいだがまだ耳がぼ〜っとしてよく聞こえない。
そして幸村の顔が近付いて頬にキスをした。
どええええええええええっっっっ!!!!
何やってんだ!幸村はっ!!!
しかし声も出なければ体もまだ動かせない俺に抵抗の術はなかった。
幸村の唇はそのまま下に下がり首筋に吸い付き、そしてユニフォームをまくって今度は胸に吸い付いた。
だが、感覚は全く無い。
ただ、幸村の指がやたらと綺麗だと思った。
テニスをしている割に形が整っている。
細くも無く白く華奢でもなくれっきとした男の手なんだけど綺麗だと思った。
その綺麗な手が、指が、俺に触れている。
幸村の両手が俺のハーフパンツの腰のゴムにかかり、下着ごと一気に下げられた。
「こおらっ幸村ぁっ!てめー俺が黙ってるのいいことに何やりやがってんだよ!」
「イイコトvv」
突然怒鳴った俺に幸村は一瞬ビクッとしたが、いつもの優雅な(外見だけ)笑顔で淡々と言いやがった。
「おめーがよくても俺は良くないっ!」
「聴覚も戻ったみたいだし、口もきけるようになったね」
「あ・・・」
そうだ、さっきまで俺はかろうじて視力があるだけだった。
それが耳も聞こえるし、口もきける。
「後は触覚だね」
と言うや否や幸村の綺麗な指が俺のモノを掴んだ。
「ってめー!どこ触ってんだよ!」
「ブン太のチンコ。萎えてるね、やわらかいよ」
「口に出して言うなっ///」
確かに触られている感触が無い。
「てかお前何で俺にこんなことするの?」
「イップスの早期回復。早く触覚も戻せよ」
幸村の端正な顔が近づく、ピントが合わないくらいに顔がぴったりとくっついているから恐らく今俺たちはキスをしているのだと思う。
「お前、イップスにさせた相手に今までこんなことしてたんだ」
「ブン太が初めてだよ。こんな治療をするのは」
「はあ?」
「倒れたブン太を見ていたら妙に色っぽくてムラっときちゃった」
「それ、何かおかしくねー?」
「おかしいかもね。でも五感を失ったブン太とやってみたら早くイップスが回復したりして。なんて思ってたらホントに早くに回復したからびっくりしたよ」
その言葉を聞いて、何故だかチクリと胸が痛んだ。
じゃあ、今後イップスにさせた対戦相手全員に幸村はこんなことするのか?
俺は今まで幸村を特別視してた。
テニスがめちゃくちゃ上手い。神の子。
ヒーローのように憧れていたという思いは、実のところ恋だったということに初めて気が付いた。
男にこんなことされてるのに不思議と嫌だと思わない。
寧ろ幸村だからよかったと思える。
幸村の綺麗な手が再び俺に触れる。
その手はちょっと冷たい。
ヒーローのように憧れていた幸村は特別視していたせいか人間離れしてるように思ってしまってた。
だから幸村にもこうやって性欲があるだなんて思ってもみなくて、でも現実の幸村は俺にエッチなことを現在進行形でやっている。
それが未だに信じられなく疑っている。
ラケットを握る綺麗な手にアソコを握られているのにものすごく嘘っぽくて信じられなくて俺の頭は一層混乱する。
ふいに体を起こした幸村は自分のハーフパンツを膝まで下ろした。
出てきたのは誇張して天を仰ぐ幸村のモノ。
幸村が勃起してる・・・
ああ幸村も普通の男なんだ。
でも
「俺なんかでいいわけ?」
幸村程の器量なら女でも男でも不自由しないだろう。
「ブン太がいいんだ」
そして俺の両足を肩に担いで侵入して来た。
幸村と繋がっている。
幸村に揺さぶられている。
下を見ると確かに幸村のモノが俺の中に入っていて結合部がとっても卑猥だ。
そして俺の腰を掴んで前後にピストン運動をする幸村の顔が赤く染まっていて潤んだ瞳で俺を見ている。
幸村は俺に欲情しているんだ。
でも俺は幸村を感じれない。
幸村が入っている感覚も判らなければ、腰を打ち付ける衝撃も感じない。
俺の前はあれだけ触ってもらっていたのに相変らずだらりと垂れたままだ。
「うっ・・・くっ・・・・・・」
自然と涙が溢れてきた。
「どうしたのブン太?痛い?」
幸村が心配そうに俺の顔を覗き込んできたので俺は思いっきり幸村の背中にしがみついた。
思っていたよりもずっと広くて逞しい背中だった。
「痛くないから悲しいんだ」
そんなつもりはないのに後から後から涙が溢れてくる。
あれ、俺こんなに泣き虫だっけ?
「俺も幸村のこと感じたいんだよ。こんなの嫌だ」
「ブン太・・・」
真正面に幸村の顔、見ているだけでドキドキと鼓動が早くなる。
緊張している
幸村に
「ブン太、俺を見て、俺だけを感じて」
優しいキスの嵐が降って来る。
頬にキス、耳にキス、額にキス、鼻にキス、そして唇に
結局俺は最後まで触感が戻らなかった。
幸村は俺から抜いた後、射精をした。
俺の腹に掛かった精液が妙にエロかったけど俺は意外と冷静だった。
「あ〜、幸村君の遺伝子だ〜」
「ごめん、直ぐに拭き取るよ」
幸村は俺をきれいに拭いてくれて乱れていたユニフォームもちゃんと直してくれた。
その間、二人の間に会話はなかった。
なんかとても気まずかった。空気が重いというのはこのことだろう。
「明日にはちゃんと触感も戻ってるだろうから・・・」
そう言って先に保健室から出ようとする幸村の腕を俺は無意識に掴んでいた。
だめだ、ここで掴まえておかなくちゃ、このまま2人、保健室を出たら今まで通りのただの部活仲間じゃん。
「幸村、俺の触感が戻ったらちゃんとやり直ししてくれるよな」
瞬間、驚いたように目を丸くして固まる幸村。
こんな幸村を見たのは初めてだ。
「お前だけ気持ちいいの不公平じゃん」
途端固まっていた表情が花の様に綻んだ。
「フフッ、それもそうだね。今度こそブン太の喘ぎ声聞きたいな」
「そんな恥かしい声は出しませーん!」
「意地でも出させてやるよ」
「やれるもんならやってみろぃ」
俺はひょいと背伸びをして幸村のユニフォームの襟を掴んでやった。
そして僅かに近付いた顔にすかさず
チュッ
「ブ、ブン太っ・・・」
相変らず幸村の唇の柔らかさと温かさは感じられなかったけど、幸村を驚かせるには十分だった。
「それとさ、」
「何だい?」
「俺以外の奴がイップスになってもこんな治療はするなよ」
「何それ、俺が他の奴に触れるの嫉妬してんだ」
「そ、そーだよ!何が悪い///」
「じゃあ、ブン太君の申し出により俺は浮気しませーん」
選手宣誓みたく右手を上げる幸村。
その手が降りて来て俺の頬に触れる。
再び重なった唇に俺は相変らず幸村を感じる事はできなかったけど、幸村の温かさを心で感じることができたような気がして甘酸っぱい気持ちでいっぱいになった。
fin
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