| 〜 ten years after 〜 10年後の日常(番外編)
 
 † No Smorking †
 
 
 
 
 
 
 久しぶりに日曜日が休みでさてどうしようかと思っていたら朝っぱらから不二が渡したいものがあるから今から行く、ついでに飲み損ねたボジョレーを飲ませろと実に一方的な電話を掛けてきやがった。俺の都合ってのも考えろよ・・・
 とりあえず散らかった部屋を片付けていると不二が菊丸を連れてやって来た。
 おい、二人で来るとは言ってなかったぞ。
 
 
 「で、何の用なんだ?」
 「佐伯にこれ譲ろうと思ってね」
 とテーブルの上に差し出したのは赤のマルボロボックスが新品6箱と封の開いたもの1箱だった。封の開いた方は中を見ると5本入っていた。
 「煙草?禁煙でもする気か、不二」
 「もう既に禁煙してるよ、僕が日本に帰ってくる前日からね。タイに出張に行く時に2カートン持って行った残りだよ」
 「・・・俺に渡したいものってこれか?」
 「そうだよ」
 「って要らなくなったもの俺に押し付けてるだけじゃんか!」
 「要らないのなら他の人に渡すけど」
 「遠慮なく貰っておきます」
 俺は不二の手からマルボロボックスを奪った。
 不二が3週間のタイへの出張を終えて帰国してから2週間が経つ。数日前の不二からの電話で菊丸が不二をやっと受け入れてくれたと聞いた。おかげで直後に迎えた菊丸の誕生日はかなりラブラブだったらしい。
 正直俺にとっては少々寂しいものを感じたがここは素直に幼馴染みの恋の成就を喜ぼうと思った。
 そもそも俺が不二に煙草を勧めたのは不二が言えない想いを抱えて苦しんで精神状態が少々不安定な時だった。
 今の不二にはもう必要のないものだ。
 もう煙草に頼らなくても不二は大丈夫なんだ。
 
 「何ニヤついてんのさ」
 いつの間にやら俺の口元は緩んでいたらしい。
 「不二が煙草を卒業したんだなと思うとつい微笑ましくなってな」
 「卒業?別に煙草を卒業とかそんな気持ちじゃないけど」
 「じゃあ何で禁煙するんだ」
 「英二がさ、僕とのキスが不味いっていうから・・・」
 言うや否や不二は隣に座っている菊丸の肩を抱き寄せて顎を掴んで強引にキスをした。
 「んんんーーーーっ!!!!」
 菊丸は嫌がって不二を引き剥がそうとしているが不二に固く抱きしめられて身動きがとれずに声にならない抗議の声をあげている。
 
 というか何で俺はこんなバカップルのキスシーンを目の前で見せ付けられなきゃいけないんだろう・・・・・・
 俺は数秒後に我に返ったが結局何も出来ずにただ見ているだけしかなかった。
 不二は目の前に俺がいるのもお構いないしで角度を変えたり菊丸の唇に吸い付いたり舌を差し入れたり相当なディープキスを施している。
 「不二はキスが上手い」とかつて潮也君が言っていたのを思い出した。優しくて、時には強引でもあり官能的なキス。とろけそうなその感覚に次の行為を求めてしまいたくなり身も心も不二に捧げたくなった―――――
 そして彼は不二に本気になってしまった。
 
 
 「ば、馬鹿!何すんだよ!佐伯の前じゃんか!」
 菊丸も負けてはいない。無理矢理不二を引き剥がして突き飛ばした。
 怒っている菊丸の顔は息が上がっていて目が潤んでいる。
 すげー色っぽい・・・
 
 「佐伯、今英二の事色っぽいとかやましいこと考えてるでしょ」
 「ギクッ・・・」
 何でばれるんだ!
 「英二は僕のものだから。今後一切手を出したら許さないよ」
 不二が俺を睨み付けてひとこと言った。
 怖ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ・・・・・・!!!!
 まじで背筋に冷や汗が走った。
 
 
 「不二、煙草とかボジョレーとかいうのは口実で本当はいちゃいちゃぶりを俺に見せ付けに来たんじゃないのか?」
 「あ、解ったvv」
 俺は頭を抱えた。
 
 こいつ、絶対馬鹿だ・・・
 
 馬鹿と天才は紙一重じゃなくて表裏一体だ。
 何で世間の人間はこいつの天才面しか見ることが出来ないのだろう。
 何が天才・不二周助だ。
 俺の前に座っているのはただのノロケ野郎じゃないか。
 
 でもまあいいか。
 幼馴染みの俺だけが見れる不二の馬鹿姿だから。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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